New moon cafe Merta Sari

新月の日だけに開くカフェ《New moon cafe Merta Sari》。 毎月の新月の日から、カフェでのストーリーと、体と心を滋養するレシピをお届けいたします。 Written: Saki Ikeda, Produced: Emi KOHARA (Mertasari)

カテゴリ:New moon Cafe Merta Sari > Story

いつの間にか、来客がもう一人いて、お店の方のにこやかに話している。そして、ガサゴソと紙袋から紫色をした小瓶を幾つかお店の方に渡して、談笑した後ににっこりと会釈して去っていった。

 

「ご近所さんなんですよ。」とお店の方が私の視線に気づいて説明してくれる。

 

「庭の桑の木があっという間に大きくなって、今年もたくさんの桑の実がなったとのことで、シロップを作っておすそ分けくださったんです。雨が降り込める前にたくさん摘んで。もしよかったらちょっと召し上がってみませんか?」

そう言って、小さな可愛らしいお皿にささっと透明のゼリーを砕いて盛り、その上にルビーレッドのシロップと粒々した桑の実を一粒乗せてさっと出してくれた。

 

メニューにも載っていないデザートが出てくるなんて、といつもだったら恐縮して辞退するような私なのに、その小さなお皿があまりにもキラキラしていて美味しそうだったので、つい口に運んでしまった。なんだかお店というよりも友達の家や、実家に来たかのような心地よい甘えの気分になっていた。

 

生まれて初めて見る桑の実と、その色の深い吸い込まれそうなシロップ。

こんな風に庭の果実を摘んでシロップを作って近所にお届けにくる若くて綺麗な女性がいるなんて、なんだかおとぎ話の森の中のようだなあと、改めてため息をつく。こんな風に、季節に合わせて庭の恵みを頂いて、好きな人におすそ分けをしたりして、、、。

 

お皿の中で、ゼリーとシロップが混じり合って、紫陽花の花を思わせる。


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半分ほどお皿が進んだ頃に

 

「食後のハーブティーなのですが、新月のためのエネルギー調整に。そして、お客様の消化を助けてくれるようなハーブとスパイスで、調合させていただこうかと思うのですが、苦手なお味などありますか?」

と、お店の方が訊きに来てくれた。

 

苦手な味は特にないと答えながら、エネルギー調整なんて、まるで魔法使いのようだな、そして、どうして私の胃腸の調子が良くないことがわかったんだろう、、、と、メニューの「〜素敵な新月明けの朝を迎えるために」という文字を眺めながらぼんやり夢見心地で思う。

食後のハーブティーは、お食事に使われていたハーブと同じ長野のハーブ園の方が作られているとのことで、ドライハーブならではの、お日様の乾いた香りがした。

 

カモミールの優しさ、ミントの清々しさ。きっととても健やかな育ちのハーブたちなのだろうな、どんな方がどんな風な日常の中で、このハーブたちを育てているんだろう。長野も広いし、どのあたりなのだろうな、行ったことのない場所なのだろうな、と口元から広がってゆく世界に思いを馳せながら、そこに少し加わったフェンネルが食後の胃腸やニンニクの強さを、すっきりとやわらげてくれていることを感じる。

 

身体の声が聞こえる、とはこういうことなのだろうか?

今までこんなにリアルタイムで身体の変化を手に取るように感じたことなど一度もなかった気がするし、「身体の声を聴いて」と言われても、いまいちピンとこなかったけれど、

 

こんな風に、身体の中に胃があって、口から食べ物を摂取することで、生き生きと動き始めて、そのエネルギーを取り込んだ身体がぐんぐん元気になってゆく。

そして小さな種のようなスパイス一つで、舌がピリッとして汗をかいたり、胃がスッキリと爽やかに感じたり、気づくと目もぱっちりとしていて、明らかに背筋も伸びて。この変化を「身体の声」と言うのであれば、それは常に私と共にある大きな生命の動きのしるしだったのではないだろうか。私がそれを見るピントの合わせ方を知らなかっただけで、常に私の身体は何かを食べるたびにこのようなダイナミックな変化をしていたのではないだろうか。

 

今、自分が来た時とは別の人間に、なっている気がする。




***


満たされた、美しい気持ちと体で、私はそのお店を後にした。

次は、あのお店の方にも話しかけてみよう。

ウッドデッキのテラス席にも出ていいか聞いてみよう。

あと、桑の実のシロップ、嬉しかったですとちゃんと自分の気持ちも伝えてみよう。

そんな風に思いながら、手帳のページの次の新月7/13にマルをつけた。

 

今日から始まって、次の新月まで28日間。

たった28日だけれど、毎日がこんなエネルギーに満ち満ちたご飯を食べていたら、きっと今の自分とは別の自分になっているのだろうなあと思う。身体の中の構成要素がすべて入れ替わり、あのお魚やハーブや野菜のような、あのお店の女性のようなイキイキとした自分に。

 

だけれど私は、きっとまた日常の人間関係で磨耗したり、生理前に便秘したり、生理がきて下痢になったり、ストレスでいろんなものをやけ食いしたりして、一ヶ月後にはまた這々の体でこのお店のドアを開けるに違いない。

 

でもいつかどうにかしたいなあと思っている日常の課題の数々、どうにもならないと思って諦めていた重苦しい物事も、このお店のご飯を食べた後だと「どうにかなるのかもしれない」と希望を持って見ることができる。

 

そうだ、次にここに来るまでには何か一つ、変わっていよう。今とは違う、自分になっていよう。

 

そうしたら、あの素敵なお店の方にも堂々と話しかける勇気が持てるかもしれない。

そして、ハーブがどこからやってきたものなのか、聞いてみよう。もしかしたら、旅行に行くついでにそこに立ち寄ることもできるかもしれない。

 

そんな風に思って、ワクワクしながら軽い足取りで私はいつもの暮らしに戻って行った。
 

 

-FIN


Written by Saki Ikeda

***

明日からはレシピ。7:00amに公開します 

6月18日【Recipe】ギーを垂らしたアスパラガスのポタージュ



***

少しずつ。心地よく整える体と心。

***

メルタサリ=Bless+Beauty 天から授かる、内からの美しさ 


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Emi KOHARA

*オーナー/セラピストEmi プロフィールはこちら

*トリートメントご予約・お仕事のご依頼はこちらから
https://select-type.com/e/?id=_Ugni1n4ySs

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https://www.facebook.com/emi.koharasan

*InstagramにてNew moon cafe レシピをご紹介していきます
https://www.instagram.com/emi_kohara/

 


  


 

メニューを開くと

ーーこの季節は、どことなくそわそわしたり、落ち着かなかったりしませんか?初夏を過ぎ、急に寒暖差も大きいこの季節。雨に濡れた体が冷えることで不調も出てきます。

 

と書かれており、

ーーその様なあなたのために上質なお菓子のように至福の香りを漂わせる「ギー」と、「黒胡椒」、「しょうが」、そして庭になる「実山椒」、「茗荷」を季節のスパイスとしてふんだんに使いました。

ーーこの季節の不調を取り除いてくれる食材やスパイスたち、そして甘/酸/塩と言う味のアクセントに身を委ねてみてください

 

と、物語の序章のような言葉に続いて 

自然の野山の描写そのもののような、メニューが続いていた。

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Drink

 

<6月のnew moonビオワイン>  glass 800yen

 

●ナチュールルージュ2016 le Clos du Caillou (赤)

 ---小さなベリーのフルーティーさに繊細なタンニン。
降り続く雨の日のようにあなたを深いリラックスに導き、
軽やかにも関わらず、何か考え深くもある不思議なワイン。

 

 

●トゥーレーヌ ル・プティオ2015Vincent Ricard(白)

 ---収穫はすべて手作業。自然酵母での醗酵採れたてのフレッシュハーブのアロマがしっかりとあり、
新鮮なシャキッとした酸味が特徴です。

 

 

<6月のnew moon オーガニックハーブティー> 850yen

 

●月の光に包まれて 〜素敵な新月明けの朝を迎えるために

  ---キャンディミント、レモンバーム、カモミール、エキナセア、フェンネルの
Lehti Farm& Merta Sariオリジナルブレンド







Lunch

<6月のnew moonデリプレート> 1,600yen

 

 採りたての空豆とグレープフルーツと黒こしょうのサラダ

 茗荷とナスの醤油麹とギー炒め

 人参とデーツの梅酢サラダ

 ツルムラサキの白みそ和え(ギーとしょうがを隠し味に)

 

 


<6月のnew moon旬のお魚ランチ>   1,600yen

 

 イサキの香草焼き
(ローズマリー、タイム、セージ、イタリアンパセリなど長野からのハーブをふんだんに使い、フレッシュなレモンを絞って)

 

 

※どちらのランチにも6月のスープとご飯or パンが付いてきます

 

 

<6月のスープ>

ギーを垂らしたアスパラガスのポタージュ


<6月のご飯/パン>

えんどう豆と自然五穀米のご飯(クミンを隠し味に)/バゲット
 







 

ここのところ続いていた雨のせいか食欲がなかったので、胃をさすり少し迷いながらも

 

たくさんのハーブが胃腸を整えてくれる気がして、旬のイサキのランチをオーダーしてみた。

***

魚の焼ける香ばしい香りがしてきて、思いもかけずお腹がぐう、と鳴ったまさにそのタイミングで

 

淡いウグイス色をしたポタージュと、スライスされたバゲッド

そして

フレッシュなハーブがうず高く盛られた一皿が運ばれてきた。

 

***

緑の山をかき分けるようにして、イサキの身をナイフとフォークで口に運ぶと、柔らかだけれど引き締まって、ほのかに甘い魚の味と、さらにそこに優しい、ギーの香りがふんわりと漂って思わず目を閉じた。

おいしいなあ!

こういうものが私の暮らしている中には足りていなかったんだな。

急に毛穴が開き、体がブワッと喜びにあふれてくるような、強いエネルギーが

体の中に流れ込み、あとは夢中でハーブと、ピリッと新鮮なブラックペッパーとジンジャーの刺激をアクセントに、まるまるとしたイサキをゆっくりと、夢中で口に運んだ。シンプルな味の中に、グリーンの一つ一つが今にも飛び出して行きそうなほどピンピンとした元気なエネルギーを放っていて、時々口に運ぶポタージュの柔らかさとまた対照的でそれもまた発見だった。お野菜って豊かだなあと思った。

バゲットは、kaisoと言うパン屋さんのものなんです、とお店の方が言った。

 

カリッとした周りと、ジュワッとした中の口ざわりの中に小麦の味がふんだんにする、添え物ではない、本当に美味しいバゲットだった。

どれ一つをとっても、見えないけれどエネルギーに満ち溢れていて、今まで自分が食べていたどんなご飯とも違っていた。

 

食べ終わる頃には、すっかり一つの何かをやり遂げたかのような、満足感と達成感でなんだか身体の力がすっかり抜けて、温泉に入った後のようなほかほかで、ぐんにゃりとした猫のような自分になっていた。

 


 


Written by Saki Ikeda

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明日はついに最終話。7:00amに公開します 

6月17日変わりゆくカラダ



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少しずつ。心地よく整える体と心。

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音に気付いたお店の方がこちらを振り向き、いらっしゃいませと微笑んだ。

すらりと背の高い、美しい女性だった。

少しホッとして、私は店内を見回し、窓際の明るいコーナーにある場所に

席をとった。

ふと左手を見ると開放型の窓の外には、大きなウッドデッキと木々の緑が広がっている。

街の中なのにこんな場所があるなんて、とまるで避暑地の森のようなその光景に心底驚く。

 

 

梅雨入りしたばかりの6月の曇った空の下で、緑の木々は眩しいくらいに鮮やかなのに、とても優しく見えた。

 

緑の枝を揺らす小さな風や、地面のしっとりとした土の色、瑞々しい空気の匂い、街の中の日常でこれらを自分がどれだけ欲していたのだろう。

 

「こちらが今月のメニューになります」という言葉にハッと目を上げると、先ほどの女性が長い腕を伸ばし、湯気の立つグラスとメニューを、テーブルに静かに置いた。

 

 

細長いだけの手足や体つきは大抵人を不安にさせるものだが、彼女のしっかりとした腰幅と、少し割れたような低めの声には、むしろ人を安心させる何かがあった。少し顎を上げながら傾けた首の角度と長さはモディリアーニの絵画の女性を彷彿させる。素敵な人だなあ、と思った。

 

***
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手元のグラスは、お白湯だった。


通常の飲食店では氷の入った冷たい水が運ばれてくるのが常だったので少し驚きながらも、厚めのフェルトのスリーブがついたそのグラスを両手に持って、ちびちびとお白湯を口元に運びながらメニューを眺めていると、身体の中が少しずつ、柔らかくほぐれていくのを感じた。

 

6月とはいえ、雨が降り始めてからは朝晩の空気は冷たく、また雨に濡れた日には足先が冷えたままになっていることも多い。

 

なんとなく身体全体が冷えていたのかもしれない。

 

初夏を迎えてからは、嬉しくてサンダルを履いたり、素足の足元を楽しんだりしていたけれど、元々冷え性の私にはちょっとまだ早かったのだろう。

 

温かさで身体がほぐれてゆく幸せは冬によく感じるが、まさか6月にもこんな幸せを感じるなんて。ほっとして、そして心底幸せになると同時に、今までこんなに自分はこわばっていたのか、、、と少しびっくりしつつ、その感覚も懐かしかった。


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メニューを開くと

ーーこの季節は、どことなくそわそわしたり、落ち着かなかったりしませんか?初夏を過ぎ、急に寒暖差も大きいこの季節。雨に濡れた体が冷えることで不調も出てきます。

 

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ーーその様なあなたのために上質なお菓子のように至福の香りを漂わせる「ギー」と、「黒胡椒」、「しょうが」、そして庭になる「実山椒」、「茗荷」を季節のスパイスとしてふんだんに使いました。

ーーこの季節の不調を取り除いてくれる食材やスパイスたち、そして甘/酸/塩と言う味のアクセントに身を委ねてみてください

 

と、物語の序章のような言葉に続いて 

自然の野山の描写そのもののような、メニューが続いていた。

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Written by Saki Ikeda

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6月16日【第1話-3】6月水無月の新月 [梅雨] 〜Story〜 自然の野山のようなごはん



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少しずつ。心地よく整える体と心。

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とある街に、新月の日だけに開くカフェがあるとどこかで聞いて

半信半疑でその街を訪ねたことがある。

とはいえ、日中明るい時には新月だろうが満月だろうがわからない。

歩く道が心許ないのは

月の暦だけを頼りに、初めての街に降り立ったせいなのだろうか、

それとも新月そのもののエネルギーのせいなのか、、、。

 

 

 

やっぱり無謀だったかな

 

頭を切り替えて、帰ろうとしたその時


ふわっと風が吹いて、揺れた木々の間から

 

New moon café Merta Sari」と書かれた看板が現れ、目を見張った。

 

 

ここだ。

カランコロンと、ガムランのような温かな竹の音のドアベルを鳴らしながら

 

そっと扉を開く。

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Written by Saki Ikeda

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6月15日【第1話-2】6月水無月の新月 [梅雨] 〜Story〜出会い 



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少しずつ。心地よく整える体と心。

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